国内外の諸情勢を敏感にとらえて取り組まれた大衆運動

1反戦・反基地、人権問題等様々なテーマで取り組まれた大衆運動

 大衆運動については、平成20年中、憲法改正問題や在日米海軍横須賀基地への原子力空母配備等をとらえた反戦・反基地、平和運動のほか、中国のチベット政策等をとらえた人権擁護運動等が取り組まれました。
 労組、大衆団体等は、憲法改正問題をめぐって、5月4日から6日まで、千葉市において「9条世界会議」と銘打ち、「世界は9条を選び始めた」などとして、集会等に取り組みました(主催者発表延べ2万人)。
 また、労組、大衆団体等は、在日米海軍横須賀基地への原子力空母ジョージ・ワシントン配備(9月25日配備)をとらえて、「原子力空母の配備を許すな」などと訴え、7月13日(主催者発表3万人)と19日(主催者発表1万5,000人)、横須賀市において、それぞれ抗議集会等に取り組みました。
北京オリンピック聖火リレ-に対する抗議行動(4月、長野)
北京オリンピック聖火リレ-に対する抗議行動(4月、長野)
 このほか、大衆団体等は、中国のチベット政策をめぐり、「チベットに自由を」などと訴え、3月22日に都内・三河台公園において、抗議集会、デモに取り組んだほか、長野市で行われた北京オリンピック聖火リレーや中国要人来日をとらえて抗議行動に取り組みました。
 今後も引き続き、国内外の諸情勢を敏感にとらえ、労組、大衆団体等多様な勢力を結集した大衆運動が取り組まれるものとみられます。

2核燃料サイクル、もんじゅ運転再開等をとらえた反原発運動

 反原発運動では、20年中、核燃料サイクル事業の推進や原発トラブルをとらえた集会、デモが取り組まれました。
 原発の使用済み核燃料からウラン酸化物とウラン・プルトニウム混合酸化物を取り出すための商業用施設である日本原燃株式会社再処理工場(青森県六ケ所村)の本格稼働をめぐり、反原発団体は、「止めよう再処理」等と訴え、4月12日と6月7日に、青森市内において、抗議集会やデモに取り組みました。
 また、19年の新潟県中越沖地震に伴う放射性物質の漏洩等のトラブルにより稼働を中止している柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市)をめぐり、反原発団体は、6月28日と29日、柏崎市内において「柏崎刈羽原発廃炉」等を訴え、抗議集会やデモに取り組みました。
 さらに、高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運転再開をめぐっても反原発団体は、12月6日、敦賀市内において「「もんじゅ」運転再開阻止」等を訴え、抗議集会やデモに取り組みました。
「もんじゅ」運転再開阻止を訴えるデモ(12月、福井)
「もんじゅ」運転再開阻止を訴えるデモ(12月、福井)
 今後は、日本原燃株式会社再処理工場の本格稼働を始めとした核燃料サイクル事業や、高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開をとらえた反原発運動が取り組まれるものとみられます。

3海外から波及した過激な大衆運動

 環境保護運動をめぐっては、米国のシー・シェパード(Sea Shepherd)が、19年2月、南極海において、我が国の調査捕鯨船に対し、発煙筒や薬品入りの瓶を投てきしたり、同団体が所有する船舶を衝突させるなどの妨害行為を行いました。また、20年1月には、活動家が調査捕鯨船に乗り込むなど、妨害行為の危険度をエスカレートさせ、3月にも、同様の妨害行為を繰り返しました。
 警察では、19年2月のシー・シェパードによる調査捕鯨船に対する妨害行為に関し、20年8月、威力業務妨害等の容疑で、同団体の外国人活動家3人に対する逮捕状を取得し、9月に国際手配を行いました。
 一方、グリーンピース(Greenpeace)は、1月、南極海において、給油中の我が国の調査捕鯨船と給油船の間に大型ゴムボートを割り込ませる妨害行為を行ったほか、ウェブサイトで、「クジラ保護」のための農林水産大臣等に対するメール送信を呼び掛けるキャンペーンを展開するなど、南極海における調査捕鯨に対し、反対運動を展開しました。
 こうした中、グリーンピースは、6月、調査捕鯨船の乗組員が鯨肉を業務上横領しているとして、これを告発する目的で、青森県内の運輸会社に侵入し、鯨肉が在中する紙箱を窃取しました。
 警察では、犯行に及んだグリーンピース・ジャパンの構成員2人を窃盗等で逮捕しました。
シー・シェパードの妨害行為(3月)((財)日本鯨類研究所提供)
シー・シェパードの妨害行為(3月)((財)日本鯨類研究所提供)