国際テロ情勢と警察の対応

1国際テロ情勢

1イスラム過激派の動向と国際テロの脅威

 平成13年9月11日の米国における同時多発テロ事件以降、世界各国でテロ対策が強化されているにもかかわらず、イスラム過激派によるテロの脅威は依然として高い状況にあります。中でも、アル・カーイダは、オサマ・ビンラディンの約3年振りとなるビデオ声明等を通じて対米批判やジハード(聖戦)への参加を呼び掛けるなど、米国に対するジハードの象徴的存在として、世界のイスラム過激派を惹き付けています。また、アル・カーイダを始めとするイスラム過激派組織及びその支援者は、インターネット等のメディアを効果的に活用して、過激思想を世界へ伝播するとともに、リクルート活動を進めています。
 現在、このアル・カーイダのジハード思想やオサマ・ビンラディンの声明等の影響を受け、アル・カーイダの中核(指導部)と直接の関係を有しない世界各地の各種テロ組織がテロの敢行を企図する傾向がみられます。特に、欧米等の非イスラム諸国で生まれ、又は育ちながら、何らかの影響で過激化し、自らが居住する国やイスラム過激派が標的とする諸国の権益をねらってテロを敢行する、いわゆるホームグローン・テロリスト(国内育ちのテロリスト)の危険性が各国で認識されているところです。
 南アジアでは、テロ情勢が厳しさを増しています。アフガニスタンでは、タリバンが勢力を回復するとともに、自爆テロが頻発しており、19年中は、6月に、首都カブールにおいて警察車両をねらったテロ事件により35人が死亡し、邦人2人を含む35人以上が負傷しました。パキスタンでは、7月に、首都イスラマバードにおいて発生したレッド・モスク籠城事件以降、軍や治安部隊等を標的とした自爆テロ事件が激化しており、10月に、南部カラチにおいて、帰国したブット元首相をねらったとみられる連続爆弾テロ事件が発生し、130人以上が死亡しました。また、12月には、イスラマバード近郊のラワルピンディにおいて、ブット元首相に対する銃撃・爆弾テロ事件が発生し、同元首相を含む約20人が死亡しました。
 アフリカでは、アルジェリアを中心に、イスラム・マグレブ諸国のアル・カーイダが勢力を拡大しており、4月には、同国の首都アルジェにおいて、首相府等をねらった同時爆弾テロ事件が発生し、30人以上が死亡したほか、12月には、国連施設等をねらった同時爆弾テロ事件が発生し、国連職員を含む37人以上が死亡しました。
 また、欧州では、6月、英国・グラスゴー空港に対する自動車突入テロ等事件が発生したほか、9月には、ドイツ当局が、米軍基地・フランクフルト国際空港等に対する同時爆破テロ計画の情報を入手し、実行を未然に阻止しました。
 東南アジアでは、17年10月のインドネシア・バリ島における同時多発テロ事件以降、大規模なテロ事件は発生していませんが、同事件に関与したとされるジェマア・イスラミア幹部のヌルディン・モハメド・トップ等が逃亡中であるなど、テロの脅威は、依然として存在すると考えられます。
オサマ・ビンラディンとされる者の声明(9月)(時事) 警察車両をねらったテロ事件(6月、アフガニスタン)(時事)
オサマ・ビンラディンとされる者の声明(9月)(時事) 警察車両をねらったテロ事件(6月、アフガニスタン)(時事)
国連施設等をねらった同時爆弾テロ事件(12月、アルジェリア)(時事) グラスゴー空港に突入した自動車(6月、英国)(時事)
国連施設等をねらった同時爆弾テロ事件(12月、アルジェリア)(時事) グラスゴー空港に突入した自動車(6月、英国)(時事)

2我が国への国際テロの脅威

 イスラム過激派を中心とした国際テロの脅威が高まる中、我が国は、アル・カーイダを始めとするイスラム過激派から米国の同盟国とみなされており、オサマ・ビンラディンとされる者が発した声明等において、テロの標的として名指しされています。また、我が国には、イスラム過激派がテロの対象としてきた米国関連施設が多数存在し、これらを標的としたテロが発生することも懸念されます。
 こうした中、アル・カーイダ関係者が我が国に不法に入出国を繰り返し、我が国に潜伏していた実態が明らかとなりました。さらに、現在、米国で拘束中のアル・カーイダ幹部のハリド・シェイク・モハメドが、我が国にある米国大使館を破壊する計画等に関与したと供述していたことが明らかになりました。
 また、我が国には、イスラム諸国からの入国者が多数滞在して各地でコミュニティを形成していることから、今後、イスラム過激派が、こうしたコミュニティを悪用し、資金や資機材の調達を図るとともに、様々な機会を通じて若者等の過激化に関与することが懸念されます。
 さらに、海外において、現実に我が国の国民や権益がテロの標的となる事案が発生しているほか、我が国の権益等が直接の標的ではない場合であっても、海外にいる邦人がテロに巻き込まれたこともあります。
 本年7月には、我が国において主要国首脳会議(サミット)が開催されます。主要国の首脳が1堂に会するサミットは、テロリストにとって格好の攻撃対象であり、サミット開催の機会をねらって我が国がテロの標的となる可能性があります。
 過去にも、17年7月、英国におけるグレンイーグルズ・サミット開催時に、ロンドンにおける同時多発テロ事件(56人死亡)が発生したほか、16年3月には、スペイン総選挙の3日前にスペイン・マドリードにおける同時多発列車爆破テロ事件(191人死亡)が発生しています。サミット会場を直接ねらうテロだけでなく、公共交通機関等をねらうテロにも警戒する必要があります。
我が国に不法に入出国していたアル・カーイダ関係者(時事)
我が国に不法に入出国していたアル・カーイダ関係者(時事)
グレンイーグルズ・サミット開催中に発生した同時多発テロ事件(17年7月、英国)(時事)
グレンイーグルズ・サミット開催中に発生した同時多発テロ事件(17年7月、英国)(時事)

3日本赤軍、「よど号」グループの動向

(1)日本赤軍
 最高幹部・重信房子は、公判中の13年4月、獄中から日本赤軍の解散を宣言し、同年5月、日本赤軍も組織としてこれを追認しました。しかし、同年12月には、新組織「連帯」を立ち上げ、事実上、日本赤軍の継承組織として活動を開始しました。
 現在、日本赤軍は、組織の再編を推進するとともに、逃亡メンバーに対する支援等のための海外における新たな活動拠点の構築を模索しています。また、パレスチナとの連携等を名目に組織の拡大を図っているものとみられ、テロ組織としての性格を依然として堅持し、その危険性に変化はありません。こうした現状から、日本赤軍が、重信房子ら獄中メンバーを奪還するため、あるいは、北海道洞爺湖サミットに反対するため、国際テロ事件を引き起こす可能性は否定できません。警察は、今後とも、国内外における日本赤軍支援者の動向にも特段の注意を払いつつ、逃亡中の7人のメンバーの早期発見及び逮捕に向けた取組みを推進していくこととしています。

(2)「よど号」グループ
 「よど号」犯人9人のうち、田中義三(19年1月病死)ら2人が既に逮捕されたほか、リーダーの田宮高麿ら2人が北朝鮮で死亡したことが確認されており、現在、北朝鮮に残留しているのは、小西隆裕ら5人とみられています。そのうち1人は死亡したとされていますが、真偽は確認できていません。警察は、これまでに帰国した「よど号」グループの妻5人を旅券法違反等で逮捕したほか、19年6月には、帰国した同グループ合流者1人を旅券法違反で逮捕しました。これらの者については、全員が有罪判決を受けています。子女については、13年5月から現在までに19人が帰国しています。
 また、14年3月、「よど号」犯人の元妻が公判で証言したことなどから、「よど号」グループが拉致に深く関与していたことが明らかとなり、警察は、同年9月、有本恵子さんに対する結婚目的の誘拐容疑で、魚本(旧姓・安部)公博の逮捕状を取得し、同年10月、国際手配を行いました。また、19年6月、これまでの捜査結果から、石岡亨さん、松木薫さんに対する結婚目的の誘拐容疑で、「よど号」犯人の妻の森順子及び若林(旧姓・黒田)佐喜子の逮捕状を取得し、同年7月、国際手配を行っています。
国際手配中の日本赤軍メンバー 国際手配中の日本赤軍メンバー 国際手配中の日本赤軍メンバー
国際手配中の日本赤軍メンバー 国際手配中の日本赤軍メンバー 国際手配中の日本赤軍メンバー
国際手配中の日本赤軍メンバー 国際手配中の日本赤軍メンバー 国際手配中の日本赤軍メンバー
国際手配中の「よど号」グループ 国際手配中の「よど号」グループ 国際手配中の「よど号」グループ
国際手配中の「よど号」グループ 国際手配中の「よど号」グループ 国際手配中の「よど号」グループ
国際手配中の「よど号」グループ 国際手配中の「よど号」グループ 国際手配中の「よど号」グループ

2警察の対応

1情報収集と捜査の徹底等

 国際テロは、一たび発生すれば多くの犠牲が出ることから、対策の要諦は、その未然防止にあります。そのためには、外国治安情報機関等と緊密な情報交換を行うなど、幅広い情報を収集し、それを的確に分析して諸対策に活用することが不可欠です。また、テロは極めて秘匿性の高い行為であり、テロの実行に向けた準備は秘密裏に行われるため、収集される関連情報のほとんどは断片的なものです。このため、個々の情報からのみではその真偽や情報としての価値を判断することが困難であり、情報の蓄積と総合的な分析が必要となります。
 そこで、警察では、警察庁国際テロリズム対策課を中心に外国治安情報機関等との連携を一層緊密化するなど、テロ関連情報の収集・分析活動を強化しているほか、収集した情報の総合的な分析結果を活用し、不審点の徹底解明等を推進しています。
 また、警察は、国外で邦人や我が国の権益に関係する重大テロ事件が発生した場合等に、国際テロリズム緊急展開班(TRT-2: Terrorism Response Team-Tactical Wing for Overseas)を派遣し、当該事案に関する情報収集、現地当局に対する捜査活動支援等を行っています。

2水際対策の強化

 周囲を海に囲まれた我が国では、国際空港・港湾において出入国審査、輸出入貨物の検査等の水際対策を的確に推進することが重要です。政府は、平成16年1月、内閣官房に空港・港湾水際危機管理チームを設置し、関係行政機関等が行う水際対策の強化に必要な調整を図っています。また、国際空港・港湾に配置された空港・港湾危機管理(担当)官を中心に、関係機関が連携して各種訓練の実施、施設警備に係る改善等に取り組み、多くの成果を上げています。
 また、法務省及び財務省と共同して17年1月に航空会社の任意の協力の下に導入した事前旅客情報システム(APIS)(注)については、19年2月から旅客等に関する情報の事前報告が航空機及び船舶の長に義務付けられました。また、偽変造旅券の使用や他人へのなりすましによる不法入国を防ぐため、外国人(特別永住者等を除く。)が入国する際に指紋等の個人識別情報を提供することが義務化され、外国人個人識別情報認証システムとして(BICS)19年11月から実施されています。

 (注)事前旅客情報システム(APIS)航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と関係省庁が保有するテロリスト等に係る情報を入国前に照合するシステム。

3関係省庁との緊密な連携

 テロ対策に万全を期するため、警察では、関係省庁との緊密な連携に努めています。
 こうした中、16年12月、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部において「テロの未然防止に関する行動計画」が策定され、「今後速やかに講ずべきテロの未然防止対策」及び「今後検討を継続すべきテロの未然防止対策」が示されました。これに基づいて、19年3月には犯罪による収益の移転防止に関する法律が成立し、テロ資金対策等が一層強化されるとともに、同年6月には、前年に改正された感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律が施行され、生物テロに用いられるおそれのある特定病原体物質等の管理体制が確立されました。さらに、爆弾テロに用いられるおそれのある爆発物の原料の管理強化及び17年に改正された旅館業法施行規則に基づく外国人宿泊客の本人確認の徹底を図るため、19年9月及び10月、厚生労働省から都道府県等に対し、事業者に対する指導の再徹底を求める通達が17年に引き続き発出されました。警察は、これら関係省庁の取組みを踏まえて、薬品販売事業者や旅館業者等に対する働き掛けを行っており、複数の省庁が連携してテロ対策を推進しています。現在、「テロの未然防止に関する行動計画」において今後速やかに講ずべきテロの未然防止対策として掲げられた計16項目のうち、スカイ・マーシャル(警察官による航空機警乗)の導入等の15項目が既に実施されています。
 警察庁においては、引き続き関係省庁との間で情報交換を行うなど緊密に連携しつつ、諸対策を推進することとしています。
 防衛省・自衛隊とは、平素から緊密な情報交換を行うとともに、重大テロ等が発生した場合の対処等に係る連携の強化を図っています。
 これまでに治安出動に関する国家公安委員会委員長と防衛大臣との協定に基づき、各都道府県警察とこれに対応する陸上自衛隊の師団等との間で「治安出動の際における治安の維持に関する現地協定」を締結し、武装工作員等事案を想定した治安出動に係る共同図上訓練を実施しました。その成果等を踏まえ、「治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処のための指針」を作成するとともに、各都道府県警察とこれに対応する陸上自衛隊の師団等との間で、「治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処マニュアル」を作成しています。
 また、17年10月に北海道警察と陸上自衛隊北部方面隊との間で全国初の共同実動訓練を実施して以降、19年末までに16道府県警察が、それぞれ対応する陸上自衛隊の師団等との間で共同実動訓練を実施しました。今後もこれら訓練を重ね、防衛省・自衛隊との緊密な連携を図っていくこととしています。
 海上保安庁とは、連携して原子力発電所等に対する警戒警備や共同訓練を実施するなど、引き続き緊密に協力しています。
 また、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正に伴い、18年8月から、経済産業省、文部科学省等と緊密に連携し、警察庁職員による原子力関連施設に対する立入検査を実施しています。
陸上自衛隊との共同実動訓練(11月、愛知)
陸上自衛隊との共同実動訓練(11月、愛知)

4重要施設等の警戒

 警察では、原子力発電所や首相官邸等我が国重要施設、米国関連施設、鉄道等公共交通機関等に対し、効果的かつ効率的な警戒警備を実施しています。
 また、18年7月の北朝鮮による弾道ミサイル発射等を受けて、重要施設等に対する警戒を強化し、情勢に応じた警戒警備を実施しています。
 鉄道等公共交通機関の警戒に当たっては、国土交通省等の関係機関や事業者等との緊密な連携に努め、国土交通省と事業者等がメンバーである鉄道テロ対策連絡会議に警察庁がオブザーバーとして参画し、必要な助言や情報交換等を行っています。
空港施設における警戒
空港施設における警戒

5生物化学テロ対策

 警察では、生物化学テロの未然防止を図るため、関連物質の不自然な取引等に関する情報収集、事業者や研究所等に対する盗難防止対策等の指導、保健・医療機関等との緊密な連携等を推進しています。
 また、18年12月、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律が改正され、特定病原体等所持者等の事務所又は事業所に対する立入検査が規定されたため、今後、厚生労働省と緊密に連携して立入検査を実施することとしています。
 生物化学テロが発生した場合に迅速・的確に対処するため、9都道府県警察(北海道、宮城、警視庁、千葉、神奈川、愛知、大阪、広島、福岡)に、高度な装備資機材を配備したNBCテロ対応専門部隊を設置しているほか、その他の府県警察には、必要な装備資機材を配備したNBCテロ対策班を設置しています。これらの部隊は、平素から実戦的訓練等により対処能力の向上に努めています。
生物化学テロ訓練
生物化学テロ訓練

6特殊部隊等の充実強化

 警察では、ハイジャック等の重大テロ事件等の際に出動し、これを鎮圧するための特殊部隊(SAT:Special Assault Team)を8都道府県警察(北海道、警視庁、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡、沖縄)に設置しています。SATは、ライフル銃、自動小銃、特殊閃光弾、ヘリコプター等を保有し、実戦的な訓練を重ね、部隊活動能力の充実強化に努めています。
 19年は、東京都町田市におけるけん銃発砲立てこもり事件(4月)、愛知県長久手町におけるけん銃使用人質立てこもり事件(5月)に出動し、事件解決に寄与しました。
 このうち、愛知県の事件ではSAT隊員から殉職者を出したことから、特殊部隊出動時にその運用について必要な調整及び助言を行う特殊部隊支援班(通称SSS(スリーエス):SAT Support Staff)を編成することとしました。
 また、全国の機動隊には銃器対策部隊が設置されており、重要施設の警戒警備を行っているほか、銃器等を使用した事案が発生した場合にはその対処に当たることとしています。銃器対策部隊は、サブマシンガン、ライフル銃、防弾衣、防弾盾、耐弾・耐爆仕様の特型警備車等を保有しています。
SATの訓練(7月、東京) 銃器対策部隊
SATの訓練(7月、東京) 銃器対策部隊

7スカイ・マーシャルの運用

 警察では、16年12月に開催された「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」の決定を踏まえ、ハイジャック対策を強化するため、国土交通省等の関係省庁や航空会社と緊密に連携して、スカイ・マーシャルの的確な運用を図っています。

8武力攻撃事態等への対処

 武力攻撃事態等や緊急対処事態への対処については、平素からの備えが重要であることから、都道府県警察は、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)に基づく都道府県及び市町村の国民保護計画や、市町村の避難実施要領パターンの作成・変更作業に積極的に参画しています。
 また、武力攻撃事態等や緊急対処事態において、国民保護措置等を迅速かつ的確に実施できるよう、内閣官房や各都道府県が主催する国民保護訓練(19年11月「平成19年度千葉県国民保護共同実動訓練」等)に関係機関と共に参加し、被害情報等の収集、住民の避難要領等について検討を行うなど、事態発生時における関係機関との連携強化に努めています。
警察が行う主な国民保護措置 警察が行う主な国民保護措置
警察が行う主な国民保護措置 警察が行う主な国民保護措置
国民保護訓練(11月、千葉)
国民保護訓練(11月、千葉)

9サイバーテロ対策

 情報システムや情報通信ネットワークが国民生活や社会経済活動に深く浸透している状況の下、ウェブサーバに対してサイバー攻撃が敢行される事案が発生しています。これらのサイバー攻撃が重要インフラ事業者等の基幹システムに対して行われれば、国民生活や社会経済活動に大きな被害を与えることとなります。
 このため、警察庁に「サイバーテロ対策推進室」や「サイバーフォース」を、各都道府県警察に「サイバーテロ対策プロジェクト」を設置し、重要インフラ事業者等への個別訪問等の実施を通じて、重要インフラ事業者等における情報セキュリティ対策の向上を図ることなどにより、サイバーテロの未然防止に努めています。また、事案が発生した場合には、関係省庁や、被害を受けた重要インフラ事業者等と連携して、被害拡大防止及び事件検挙に当たることとしています。
サイバーフォース
サイバーフォース

10国際協力の推進に向けた取組み

 国際テロ対策を推進するには、世界各国の連携・協力が必要であることから、G8や国連等の場において、政府首脳間、治安担当大臣間、警察機関相互間等で諸対策に関する活発な議論がされています。警察庁も、これらの国際会議に積極的に参加しており、19年5月にドイツ・ミュンヘンで開催された「G8司法・内務大臣会議」には、警察庁次長が出席し、テロ対策や国際組織犯罪対策について協議しました。
 また、警察庁では、7年度以降、国際協力機構(JICA)との共催により「国際テロ事件捜査セミナー」を開催しており、19年9月にも、世界各国のテロ対策担当者を招へいし、テロ事件の捜査技術に関するノウハウの提供を積極的に行いました。
 その他、テロ対策に関する地域協力を推進するため、8年度以降、外務省との共催により「地域テロ対策協議」を開催しており、19年2月にも、東南アジア諸国等からテロ対策担当者を招へいし、国際テロ情勢等に関する情報交換を行いました。
 さらに、我が国は、国際連合安全保障理事会決議第1373号等で求められているテロリスト等の資産凍結にも積極的に取り組んでおり、警察庁は、機動的な資産凍結の実施のために設置された「テロリスト等に対する資産凍結等に係る関係省庁連絡会議」に参加しています。我が国では、527のテロ関連個人・団体を資産凍結対象としています。
G8司法・内務大臣会合(5月、ドイツ)(時事)
G8司法・内務大臣会合(5月、ドイツ)(時事)