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1 危険性を具備する教団運営の実態

 オウム真理教(以下「教団」という。)が、麻原彰晃こと松本智津夫被告の指示の下、「地下鉄サリン事件」を始めとするテロを行ってから10年以上が経過しました。しかし、教団は、信者に松本被告の説法を収録したビデオテープの視聴を義務付けたり、松本被告への帰依を誓わせたりするなど、「原点回帰」の教団運営を鮮明にしており、いまだ治安に対する危険性を具備しています。
 一方、教団内部には、こうした「原点回帰」の教団運営に批判的なグループも存在し、執行部との間で対立もみられます。
 なお、教団は、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づき、平成12年2月以降、観察処分に付されていますが、18年1月、公安審査委員会は、同処分の期間を更に3年間延長することを決定しました(15年に第1回目の更新が行われ、今回は第2回目の更新である。)。

2 組織拡大に向けた活動

 教団は、17年5月10日には埼玉県越谷市に、8月10日にはさいたま市に新たに拠点施設を増やし、17都道府県28か所の拠点施設と全国約100か所の信者居住用施設を保有しています。
 信者の数は、現在約1,650人とみられます。教団は、依然として、信者を教団施設に居住させて閉鎖的活動を続けているほか、ウェブサイト、大学や地域のサークル活動等を通じ、教団名を伏せた勧誘活動等を組織的に行っています。

3 ロシア人信者に対する指導の継続

 教団は、3年ころからロシアに進出しましたが、7年の「地下鉄サリン事件」以後、教団の宗教活動が禁止され、ロシア支部は閉鎖されました。しかし、13年に再びモスクワ市内に拠点を確保し、その後継続的に日本から教団幹部を派遣して、ロシア人信者に対する指導を行っています。17年1月には、正悟師の1人がロシアを訪れました。現在のロシア人信者は、約300人とみられ、共同の修行場所とされる教団施設を保有しています。

4 松本被告等の裁判の動向

 「地下鉄サリン事件」等13事件の首謀者として殺人等の罪に問われた松本被告は、16年2月27日、東京地裁で死刑判決を受けました。その控訴審は、控訴趣意書の提出期限の延期、松本被告に対する精神鑑定の実施等により、17年中は開廷されず、大幅に遅延しています。
 また、「弁護士一家殺害事件」等2事件で死刑判決を受けていた元教団幹部からの上告に対し、最高裁判所は、4月7日、「動機は教団の組織防衛だけを目的としており、(中略)酌むべき事情を十分考慮しても、刑事責任は極めて重大と言わざるを得ない」旨判示し、これを棄却しました。教団による一連のテロ事件については、一部の教団幹部に係る公判は現在も係争中であり、12人が死刑判決に対して上訴していますが、死刑判決が確定したのは、これが初めてです。


地下鉄サリン事件発生時の状況

オウム真理教の現状

1 特別手配被疑者の追跡捜査の推進

 警察は、「地下鉄サリン事件」以降、教団のテロ事件等に対する捜査を強力に推進し、これまでに、松本被告を始めとする教団幹部及び信者合わせて500人以上を検挙しました。
 しかし、警察庁指定特別手配被疑者である平田信、高橋克也及び菊地直子の3人は依然として逃走中であることから、警察は、3人の発見検挙を最優先の課題とし、広く国民からの協力を得ながら、総力を挙げて捜査を推進しています。

2 組織的違法行為の厳正な取締りの推進

 警察は、教団信者による組織的違法行為に対する厳正な取締りを推進しています。17年6月には、警視庁が職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)事件で8人を検挙し、2都県の延べ22か所の教団施設等を捜索して、パソコン、ハードディスク等の証拠物約1,600点を押収しました。
 この事件の捜査の結果、教団のパソコンソフト開発部門が、収益の安定的確保を図るため、ダミー会社を設立し、同部門の信者をダミー会社の社員のように装って一般会社に派遣するなど、違法な資金源獲得活動を行っていた実態が明らかとなりました。


オウム真理教関係特別手配被疑者

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