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 近年、警察及び海上保安庁が検挙した集団密航事件の件数は、ピークであった平成9年以降、大幅な減少傾向にあります。他方、偽造旅券等を使用した不法入国事件の検挙人員は増加傾向にあり、国際空港・港湾における水際対策が重要な課題となっています。
 こうした中、警察は、不法入国や不法残留の事実を隠ぺいし、合法滞在を偽装しようとする不法滞在者に対し、旅券や外国人登録証明書等を偽造して販売する「偽造工場」を相次いで摘発しています。また、暴力団等が介在した日本旅券の不正受給事件や、犯罪収益等を不正送金する「地下銀行」事件等も検挙しています。こうした活動を通じて、警察は、国内に拠点を置く外国人犯罪組織の拡大を防止しています。
【事例】
 栃木県警察では、11月8日までに、東京入国管理局と連携し、就労目的のインド人を我が国に不正に入国させていたインド人ブローカーを出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反(営利目的で集団密航者を上陸させる罪)で逮捕するとともに、同人が手引きした可能性の高いインド人11人を入管法違反(不法残留罪)で逮捕しました。
 逮捕されたインド人ブローカーは、密航者を不正に入国させるため、入管法で認められた「寄港地上陸」という制度(注1)を悪用して密航を手引きしていたもので、入国後の就職先のあっせんまでをセットとして、1人当たり約100万円の報酬を受け取っていました。

 (注1)船舶等に乗っている外国人乗客で、本邦を経由して本邦外に赴こうとするものは、入国審査官の許可を受けて、その船舶等の寄港した出入国港から出国するまでの間72時間の範囲内で当該出入国港の近傍に上陸することができます。


 我が国に存在する不法滞在者の数は、約24万人といわれ、依然として高い数字で推移しています。こうした中、犯罪対策閣僚会議は、15年12月に、外国人犯罪の温床となる不法滞在者を20年までに半減させるとの目標を定めました。警察では、この目標の達成に向けて、入管法第65条(注2)の活用拡大を17年9月1日までにすべての都道府県警察で開始するとともに、入国管理局との合同摘発や集中取締りを積極的に実施してきました。この結果、17年中は、入管法違反で12,624件11,143人を検挙し、そのほかに、同法第65条に基づき、5,706人を逮捕後に入国警備官に引き渡しました。これらを合わせると、17年中の入管法違反の件数は18,330件、その被疑者数は16,849人となります。
 近年、外国に本拠を置く国際犯罪組織が我が国に進出するとともに、国内に居住する不法滞在者が犯罪組織を形成し、外国人犯罪の凶悪化、組織化、広域化の傾向が顕著になっており、治安悪化の大きな要因となっています。また、偽装結婚、偽造旅券の売買等の不法滞在を助長する犯罪も後を絶たない状況にあることから、こうした犯罪についても引き続き取締りを強化する必要があります。
 警察では、関係機関と緊密に連携し、文書偽造等悪質な事案に対する重点的な取締りや退去強制の効率化等の諸対策を推進しており、今後とも、治安水準の悪化に歯止めを掛けるとともに、平穏かつ適法に滞在している多くの外国人に対する無用の警戒感を払拭するため、不法入国・不法滞在者対策に取り組んでいくこととしています。
【事例】
 静岡県警察では、17年5月、不法残留で逮捕した中国人が偽造外国人登録証明書を所持していたことから、突き上げ捜査を行い、9月15日、東京都内のマンションに所在する外国人登録証明書等の偽造工場を摘発するとともに、偽造組織の中国人4人を逮捕しました。
 逮捕された中国人は、偽造した外国人登録証明書と旅券を、セットで2万5,000円で販売するなどしていました。
 本件では、6月1日に導入された新仕様の外国人登録証明書の偽造防止用ホログラムシールが早くも偽造され、導入後わずか3か月余りで初めて押収されたほか、偽造用素材集として全国132自治体の公印の印影等を記録した電磁的記録媒体が押収されています。

 (注2)入管法第65条は、刑事訴訟法の特例として、入管法第70条の罪(不法残留等)の被疑者を逮捕した場合で、その者が他に罪を犯した嫌疑がないなど一定の条件を満たすときは、48時間以内に当該被疑者を入国警備官に引き渡すことができると規定しています。


偽造工場摘発時における押収品(9月、静岡)

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