無題ドキュメント
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4 第3回日朝実務者協議後の日朝の動向

 平成16年11月9日から14日にかけて、平壌(ピョンヤン)で第3回日朝実務者協議が開催され、この日本政府代表団に警察庁の職員が新たに参加しました。北朝鮮は、従前と同様、当時拉致被害者と認定していた15人から帰国済みの5人を除いた10人のうち、8人は死亡し、2人は入境の確認が取れないと説明しました。しかし、北朝鮮が説明する「死亡」に至るまでの経緯が不自然で、事実であるか疑わしい点や事実が不明である点が多くありました。
 この協議の際、北朝鮮は、拉致被害者の横田めぐみさんの「遺骨」と称するものを日本政府代表団に提出しました。これについて、関係警察は、専門家により慎重に選定されたDNAを検出できる可能性のある骨片10片について、DNA鑑定の分野では国内最高水準の研究機関である帝京大学と警察庁科学警察研究所に鑑定を嘱託しました。その結果、帝京大学に鑑定を嘱託した骨片5個のうち4個から同一のDNAが、他の1個から別のDNAが検出されましたが、いずれも横田めぐみさんのDNAとは異なっていました。
 政府は、同年12月25日、提示された情報及び物証を精査した結果を北朝鮮に伝えました。これに対し、北朝鮮は、同月30日、「受け入れることも、認めることもできないし、それを断固排撃する」などと主張し、「朝日政府接触にこれ以上意義を付与する必要がなくなった」と述べました。また、翌17年1月26日、我が国に「備忘録」と題する文書を提出し、横田めぐみさんの遺骨と称するものに関する鑑定結果はねつ造であると改めて主張するとともに、その返還を求めました。
 これに対して、我が国は、2月10日、北朝鮮に「北朝鮮側「備忘録」について」と題する文書を伝達し、我が国の見解は、「厳格な手続きに従い、日本で最も権威ある機関の1つが実施した客観的かつ科学的な鑑定に基づくものである」などと反論するとともに、拉致被害者の即時帰国と真相究明を求めました。
 しかし、北朝鮮は、同月24日、我が国に対し、「この問題について日本政府と議論する考えはない」などとした上で、責任ある者の処罰と遺骨の早期返還を要求しました。これに対し、我が国は、同日、「生存する拉致被害者の即時帰国と真相究明を改めて強く求め」、「北朝鮮側が6者会合に早期かつ無条件に復帰し、問題解決のために前向きな対応をとることを強く求める」などとする外務報道官談話を発表しました。
 その後、11月3日、4日の両日、北京で、約1年ぶりに再開された日朝政府間協議では、日本側から「拉致問題等の懸案事項に関する協議」、「核問題、ミサイル問題等の安全保障に関する協議」及び「国交正常化交渉」の3つの協議を並行して行う案を提示しました。北朝鮮側は、12月24日、25日に開催された協議においてこの提案を受け入れました。これらの場において、日本側より、生存する拉致被害者の早期帰国、真相究明、容疑者の引渡しを改めて強く求めましたが、北朝鮮側から、拉致被害者に関する新たな情報の提供はなく、拉致問題について具体的な進展はありませんでした。


様々な形態で展開される北朝鮮の対日有害活動

1 北朝鮮の対日諸工作

 北朝鮮は、17年中も、「拉致は解決済み」、「日本は過去の清算をすべき」との従来の主張を繰り返しました。また、我が国において経済制裁の実施を求める声が出ていることに対しては、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」等を通じ、「朝日の敵対関係は度を越して限界点に至り、交戦直前の危険千万な事態へと肉薄している」、「我が軍隊と人民は、日本の反共和国制裁発動に自衛的報復措置をもって強硬に対応するであろう」との論評を掲載するなどして、こうした動きを強くけん制、警告しました。
 また、北朝鮮は、17年が第2次日韓協約締結から100年に当たることをとらえ、韓国を含む在外の同族社会に対して民族の団結を強調しつつ、「日本は、昔も今も我が民族の不倶戴天の敵である」、「全朝鮮民族は、日帝による強盗さながらの『乙巳五(いっし)条約』ねつ造100周年に当たる今年、日本の100年の罪悪を総決算し、我が人民の深い恨みを何としても晴らすという強い意志により、日本の朝鮮再侵略野望を粉砕すべきである」等の呼び掛けも行いました。
 こうした非難、恫喝、けん制等は、我が国の歴史認識や国連安全保障理事会常任理事国入りを目指す動き等、様々な事象をとらえて行われました。

2 朝鮮総聯(そうれん)を介した対日諸工作

 北朝鮮は、朝鮮総聯を介した間接的な諸工作を展開しており、日本国内における北朝鮮に有利な世論の醸成、北朝鮮の主張に同調する日本人の結集(組織化)等を図っています。
 14年9月の日朝首脳会談において日本人拉致問題等が取り上げられて以降、北朝鮮及び朝鮮総聯に対する我が国の国民世論は厳しいものとなっています。その結果、朝鮮総聯関係者の間にも動揺が広がっており、組織離れ等による弱体化が進む中、朝鮮総聯は、我が国の各層人士・団体等に対する諸工作を活発に展開することで、盛り返しを図っています。
 とりわけ17年は、朝鮮総聯が、昭和30年5月25日の結成から50周年を迎えたことから、中央本部のほか、全国各地の地方本部等においても、大掛かりな記念行事を開催し、国会議員を始めとする各級議会議員や地方自治体関係者等を数多く招待して、北朝鮮及び朝鮮総聯の日頃の活動に理解を求めました。
 また、北朝鮮は、「拉致は解決済み」とし、日朝国交正常化は「過去の清算」を前提とするとしていますが、朝鮮総聯においても、積極的に「過去の清算」問題を取り上げ、第2次世界大戦までに我が国の企業に徴用・雇用された朝鮮半島出身者の遺骨調査のため、日本人関係団体と連携して、地方自治体に積極的に働き掛けを行うなどしています。
 なお、10月には、警視庁が、薬局開設及び薬品販売業の許可を受けずに医薬品を販売したなどとする薬事法違反事件で朝鮮総聯傘下団体である在日本朝鮮人科学技術協会の幹部2人を逮捕するとともに、同協会等関係先を捜索しました。

3 万景峰(マンギョンボン)92号の入港をめぐる動向等

 北朝鮮と日本を結ぶ北朝鮮船籍の貨客船万景峰92号は、在日朝鮮人が訪朝する際の足として利用される一方で、これまでに、不正送金や不正輸出、工作員の送り込み等、在日朝鮮人社会と北朝鮮を結ぶ裏の役割も担っているのではないかとの指摘がなされており、実際に、同船をめぐっては、過去幾つかの事件が摘発されています。
 警察は、従来から、万景峰92号の動向について、重大な関心を有してきたところであり、同船の入港の際には、関係各機関と緊密に連携しながら、必要な警備諸対策を講じるとともに、違法行為に対しては、厳正に対処することとしています。
 16年4月に「船舶油濁損害賠償保障法」が改正され、17年3月1日以降、外航船舶については船主責任保険加入が義務付けられたため、無保険であった万景峰92号は、当初予定していた4月12日には入港することができず、保険契約締結後の5月18日に、約5か月ぶりに新潟西港への入港を果たしました。なお、17年中は、前年に比べて2回少ない計14回、同港へ入港しています。
 また、万景峰92号への厳しい対応を求める声は依然として強く、入港に反対する団体等は、入港の都度、60人から80人ほどの規模で、横断幕の掲示、シュプレヒコール等の抗議行動を行っています。

4 対日諸工作の今後の見通し

 北朝鮮は、今後とも、ことあるごとに対日非難を継続するとともに、「過去の清算」を最優先させた国交正常化や朝鮮総聯の活動に対する理解者の獲得等を企図して、直接又は朝鮮総聯を介した諸工作を活発に展開するものとみられます。
 日朝間の協議においても、北朝鮮側は「拉致は解決済み」、「日本は過去の清算をすべき」との従来の主張に固執するものと見られ、出口を模索する北朝鮮側が、各界関係者に対する様々な働き掛けを続ける可能性は否定できません。


朝鮮総聯が開催した「総聯結成50周年記念中央大会」(5月、東京)(共同)
警視庁による薬事法違反事件に伴う捜索に対して抗議する在日本朝鮮人科学技術協会の関係者(10月、東京)(時事)
警視庁による薬事法違反事件に伴う捜索に対して抗議する
在日本朝鮮人科学技術協会の関係者(10月、東京)(時事)
万景峰92号
万景峰92号

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