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国際テロ情勢と警察の対応

国際テロ情勢

1 イスラム過激派の動向と国際テロの脅威

 平成17年の国際テロ情勢は、依然として厳しいまま推移しました。13年9月11日の「米国における同時多発テロ事件」以降、世界各国でテロ対策が強化されているにもかかわらず、英国、エジプト、インドネシア、ヨルダン等世界各地でイスラム過激派の関与が疑われる大規模・無差別テロ事件が発生しました。
 イスラム過激派によるテロの脅威は依然として高い状況にあり、中でも、アル・カーイダは、反米ジハード(聖戦)の象徴として存在し、世界のイスラム過激派に影響を与えています。アル・カーイダは、イラクを反米ジハードの主戦場と位置付けるとともに、メディア等を通じて、米国・英国や、イラクへの武力行使を支持した国々、親米湾岸・アラブ諸国等を非難し、全世界のイスラム教徒に対してジハードを煽(あお)るメッセージを世界に発信し続けています。また、現在、アル・カーイダの指導部との関係が認められないテロ組織が、アル・カーイダのジハード思想やオサマ・ビンラディンの声明に影響を受けてテロを実行する傾向が世界各地でみられています。
 イラクでは、4月に移行政権が発足し、10月の憲法草案の是非を問う国民投票と12月の国民議会選挙もおおむね平穏に終了しましたが、外国人テロリストやテロ資金等の流入は依然として継続しているとみられ、治安情勢が回復するめどは立っていません。
 レバノンでは、2月にハリリ前首相が暗殺されたほか、7月にはエジプトのシャルム・エル・シェイクで爆弾テロ事件が発生し、64人が死亡しました。また、11月にはヨルダンの首都アンマンで連続爆弾テロ事件が発生し、60人が死亡しました。
 欧州では、7月、英国・グレンイーグルズで主要国首脳会議が開催されている中、同国の首都ロンドン中心部の地下鉄とバスを標的とした同時多発テロ事件が発生し、56人が死亡しました。ロンドンでは、その2週間後にも地下鉄とバスを標的とした同時多発テロ事件が発生しました。
 東南アジアでは、アル・カーイダと関係を有するとされるジェマア・イスラミアを始めとするイスラム過激派の活動が依然として活発です。10月にインドネシア・バリ島で発生した同時多発テロ事件には、ジェマア・イスラミアの幹部の関与が指摘されています。ジェマア・イスラミアは、これまでにその多くのメンバーが拘束されるなどし、組織的な打撃を受けているとみられますが、依然としてヌルディン・モハメド・トップ等の主要幹部は逃亡中です。
 18年も、厳しい国際テロ情勢が続くものと予想され、イスラム過激派を中心とした国際テロ組織が、今後も世界各地で国際テロ事件を引き起こすことが危惧(きぐ)されます。

ヨルダン・アンマンにおける連続爆弾テロ事件
「ヨルダン・アンマンにおける連続爆弾テロ事件」(11月)(時事)
インドネシア・バリ島における同時多発テロ事件
「インドネシア・バリ島における同時多発テロ事件」(10月)(時事)
英国・ロンドンにおける同時多発テロ事件
「英国・ロンドンにおける同時多発テロ事件」(7月)(時事
英国・ロンドンにおける同時多発テロ事件
「英国・ロンドンにおける同時多発テロ事件」においてロンドン警視庁が公開した容疑者の画像(7月)(時事)

 


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