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4 最近検挙した北朝鮮のスパイ事件


 我が国では、戦後約50件に及ぶ北朝鮮関係の諜報(ちょうほう)事件が検挙されていますが、このうち、最近検挙された事件の概要は次のとおりです。

1 新宿百人町事件(2000年(平成12年)検挙)

 工作員として獲得された在日朝鮮人と日本人が、北朝鮮でスパイ訓練を受けた後、日本等で韓国人に対する獲得工作及び財政工作を行っていたスパイ事件です。
 朝鮮総聯(そうれん)の元活動家Aは、1979年(昭和54年)ころに北朝鮮工作員として採用され、韓国の軍・政財界関係者や在日韓国人に対する工作活動に従事し、1997年(平成9年)ころから5年間で多額の工作資金を集める財政工作を自ら計画して一部を実行するとともに、宗教活動の名目で、韓国に長期間抑留されている囚人の北朝鮮への即時送還に向けた活動を行っていました。
 また、日本人Bは、北朝鮮から指示を受けて、在韓地下党組織の機関紙の普及工作等を計画して一部を実行に移していました。また、マスコミ関係者や各界著名人に接近し、国内で情報収集に従事するとともに、宗教活動の名目で訪韓し、同国に長期間抑留されている囚人の北朝鮮への即時送還に向けた活動を行っていました。
 警視庁は、2000年(12年)11月21日、Aを詐欺で、Bを電磁的公正証書原本不実記録等で検挙しました。

2 東中野事件(2003年(平成15年)検挙)

 朝鮮総聯元幹部Cが、北朝鮮においてスパイ訓練を受けた後、韓国に対する諸工作を行っていたスパイ事件です。
 Cは1985年(昭和60年)ころから、朝鮮労働党統一戦線部の直接指導を受け、1990年(平成2年)ころから本格的なスパイ活動を始めました。1993年(5年)には、我が国における工作拠点の責任者として、他の活動家を指揮する立場になりました。
 Cは、朝鮮労働党の指令に基づき、我が国を拠点として、韓国に対する様々な情報収集活動や工作活動、例えば、韓国スパイ網の設置、あるいはマスコミや軍への工作活動といったいわゆる対韓工作活動を行っていました。
 朝鮮労働党からの指令は、我が国に入国した万景峰(マンギョンボン)92号の船長を通じて受けていましたが、朝鮮労働党の幹部が同船で来日した場合は、同船内で直接指令を受けることもありました。
 警視庁は、2003年(15年)2月28日、Cを公正証書原本不実記載及び同行使並びに出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反で検挙しました。

厳重な警備の中、入港する万景峰92号(共同)
厳重な警備の中、入港する万景峰92号(共同)

3 布施寿町事件(2004年(平成16年)検挙)

 在日韓国人Dが、北朝鮮工作員として採用され、韓国及び日本に対する諸工作を行っていたスパイ事件です。
 Dは1967年(昭和42年)、朝鮮労働党に入党し、1970年(45年)に、第三国の北朝鮮大使館で3日間にわたって本格的なスパイ教育を受け、北朝鮮工作員としての活動を始めました。1973年(48年)には、工作船を利用して我が国と北朝鮮間の潜入・脱出を敢行し、北朝鮮要人との接触に成功しています。
 Dは、北朝鮮からの諜報指令通信や我が国に入港した北朝鮮船舶内での接触等により、工作指令を受け、在日韓国人等の包摂と思想教育、韓国の政官界要人に対する働き掛け、我が国の地方議会事務局を通じた議会・議員工作等に従事していました。また、第三国で活動するために、知人の日本人の戸籍を使って知人名義の日本旅券を不正に取得していました。そのほか、Dの自宅から本人名義の北朝鮮旅券、韓国旅券も発見されています。
 大阪府警察は、2004年(平成16年)10月12日、Dを入管法違反及び外国人登録法違反で検挙しました。

Dが所持していた3種類のパスポート(共同)
Dが所持していた3種類のパスポート(共同)
万景峰92号を介した北朝鮮の工作活動を報道する各紙
万景峰92号を介した北朝鮮の工作活動を報道する各紙
(2003年(平成15年)1月29日、朝日新聞・東京新聞・読売新聞)

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