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綱領改定するも参院選で二大政党の狭間に埋没した日本共産党



1 綱領の大幅改定でソフトイメージを強調するも基本路線は堅持


  日本共産党は、平成16年1月の第23回党大会で、昭和36年の第8回党大会で採択して以来5回目となる綱領改定を行いました。改定案を提案した平成15年6月の第7回中央委員会総会では、国民により分かりやすい表現とすること及び採択後42年間の情勢の進展や党の理論・政治活動を反映させることを主眼としたと説明しました。
 改定により、マルクス・レーニン主義特有の用語や国民が警戒心を抱きそうな表現を削除、変更するなど、「革命」色を薄めソフトイメージを強調したものとなりました。しかし、民主主義革命から社会主義革命へと進む二段階革命論や幅広い勢力を結集する統一戦線戦術といった現綱領の基本路線に変更はなく、不破哲三議長も改定案提案時、「綱領の基本路線は、42年間の政治的実践によって試されずみである」旨述べ、これまでの路線の正しさを強調しました。
 また、不破議長は、16年8月の第2回中央委員会総会で、党名問題に言及し、「日本共産党が「共産党」の名前を捨てて「普通の政党」になったら、大喜びするのは支配勢力」、「党名問題も階級闘争の焦点の一つ」と、党名問題は階級闘争の一環であり、党名変更はないことを明確に示しました。
 共産党は、今後も、基本路線は堅持しつつ、ソフトイメージを強調していくものとみられます。

第23回党大会(1月、静岡)(共同)
第23回党大会(1月、静岡)(共同)
2 参院選での議席大幅減を受け党建設、憲法改正問題等への取組みを強化


  日本共産党は、16年7月の第20回参議院議員通常選挙で、参議院議員20人中15人(選挙区7人、比例代表8人)が改選となり、選挙区に46人と比例代表に25人の候補者を擁立しましたが、当選者は比例のみの4人(改選比11人減)で、大きく議席を減らしました。同党が、すべての選挙区で議席を失ったのは、昭和34年の第5回参院選(当時は「地方区」)以来、45年振りです。
 選挙の結果、参議院における同党の議席は、改選のなかった5議席と合わせて9議席となり、参議院における同党単独での議案提出権を失いました。
 この選挙では、自民党と民主党の獲得議席の合計は、改選121議席中99議席(議席占有率81.81%)に上りました。共産党は、平成15年の衆院選に続き、自民、民主の二大政党の狭間に埋没したと言えます。
 第2回中央委員会総会では、志位委員長が、二大政党制に向けた流れを「自民党政治を延命させるため、財界等支配勢力が、同じ自民党政治の土俵の上で政権の担い手だけを政党選択の焦点とし、すぐには政権の担い手とならない共産党を初めから選択肢から排除するもの」と位置付けた上で、参院選の結果については、「「二大政党づくり」の動きとのかかわりで、党の議席と得票の意義を広く国民に訴える論戦に取り組んだとは言えなかった」などとして、二大政党制に向けた流れを意識しての党の宣伝が不十分であったと総括しました。
 今後、共産党は、二大政党制に向けた流れに対抗するため、党員、機関紙等党の主体的力量の増強を目指すとともに、自民、民主両党との対立点が明確であり、国民の関心も高いとみられる憲法改正問題、消費税問題への取組みを強化するものとみられます。特に、憲法改正問題については、17年に自民党が憲法改正案の発表を予定していることなどから、共産党はこうした政治日程をにらみ、全国的な運動の盛り上げを図るものとみられます。

参院選挙開票・会見する志位委員長(7月、東京)(時事)
参院選挙開票・会見する志位委員長(7月、東京)(時事)

3 党の支持拡大に伴う違法行為の検挙


  警視庁は、社会保険事務所に勤務する厚生労働事務官が、衆院選に際し、日本共産党を支持する目的で、政党機関紙「しんぶん赤旗」号外等を、東京都内で頒布したことに対し、16年3月3日、国家公務員法違反として被疑者を通常逮捕しました。また、12月23日、チラシ・パンフレット等の投函などを目的とした立入りを禁止している東京都内のマンションで、「日本共産党都議会報告」等を配布していた男性が住居者によって住居侵入罪で現行犯逮捕され、所轄署に引き渡されました。
 これらの検挙に対して、共産党は、「不当弾圧」として、警察署前での抗議、「しんぶん赤旗」への抗議記事掲載等を行いました。

4 組織人員の減少傾向に歯止めが掛からない全労連


  日本共産党の指導、援助により結成された全労連(全国労働組合総連合)は、14年7月の第20回定期大会において創設を決議した「組織拡大推進基金」に基づき、200万人を当面の目標に勢力拡大に取り組んでいますが、企業の倒産やリストラといった要因を背景に組織拡大は思うように進展せず、16年7月の第21回定期大会では、組織現勢を「この2年間で約5万人減少し、132万8,000人となった」としました。
 17年は、前記「組織拡大推進基金」に基づき、パート・臨時職員、未組織労働者の組織化を柱とした組織拡大に取り組むものとみられます。


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