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広域的なテロ活動を敢行した「建国義勇軍」の検挙と対外問題を中心に取り組んだ右翼


1 「建国義勇軍」の検挙・壊滅


1 「建国義勇軍」事件の概要

  平成14年10月から15年11月にかけて、北朝鮮による日本人拉致容疑事案に対する政府の対応等に不満を募らせた刀剣愛好家グループ「刀剣友の会(日本人の会)」の幹部らが、それぞれの役割を分担しながら、「建国義勇軍国賊征伐隊」、「建国義勇軍朝鮮征伐隊」等を名乗り、北朝鮮関連施設、オウム真理教関連施設、教職員組合関連施設、政府政党要人を攻撃対象として、けん銃発砲、爆発物類似物件の設置、けん銃実包等を同封した脅迫文の送付等総計24件のいわゆる「建国義勇軍」事件を引き起こしました。

「建国義勇軍」事件(合計24件)

2 「建国義勇軍」事件の捜査概要

 一連の事件は同一グループによる犯行と認められたことから、警視庁、新潟、岐阜、愛知、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡の9都府県警察合同捜査本部(後に、北海道、山形、神奈川、福井を加え、13都道府県警察合同捜査本部に拡大)を設置し、緊密な連携の下に効果的な捜査を推進しました。
 その結果、15年12月、強制捜査に着手し、被疑者17人を検挙するとともに、けん銃等10丁を発見、押収するなどして、「建国義勇軍」事件24件すべてを解決して、このような「テロ、ゲリラ」事件の波及、拡大を未然に防止しました。

2 中国、北朝鮮問題を中心に活発な抗議活動を展開した右翼


  右翼は、政治、外交、領土、歴史等の諸問題をとらえて、関係国や政府等に対する活発な抗議活動を行いました。特に、16年は、尖閣諸島問題や東シナ海における天然ガス田開発等の海洋権益問題等をとらえ、中国に対する批判を強め、また、日本人拉致容疑事案等をとらえた北朝鮮批判に継続して取り組みました。
 このほか、自衛隊イラク派遣、領土問題、全教、日教組批判を中心とした教育問題や憲法改正問題等をとらえた街頭宣伝活動を活発に行いました。
 右翼は、今後も内外の諸問題に敏感に反応し、関係諸国や政府等に対する抗議活動を活発に展開するものとみられ、その過程で、政党要人、政府機関、外国公館、報道機関等に対するテロ等重大事件を引き起こすおそれがあります。

3 ディーゼル車規制条例への対応を迫られた街頭宣伝活動


  15年10月から、東京、埼玉、千葉及び神奈川の4都県において、基準を上回る粒子状物質を排出するディーゼル車の運行を規制する条例が施行されました。同条例施行後、これらの地域で使用される街頭宣伝車の種類は、従来の大型車両からワゴン型車両中心に移行したほか、ガソリン車への買い換えや粒子状物質減少装置の購入の見通しが立たず、街頭宣伝活動の中止を余儀なくされる団体がみられました。

4 違法行為の徹底検挙


  右翼は、「テロ、ゲリラ」事件を始め資金活動に伴う事件、街頭宣伝活動に伴う事件等多くの事件を引き起こしてきました。警察は、右翼によるテロ等重大事件の未然防圧と違法行為の徹底検挙に努めています。

1 テロ等重大事件の未然防圧
 16年中は、「在大阪中国総領事館に対する街宣車正門突入車両焼燬事件」(4月、大阪府)、「国会議事堂衆議院通用門前における車両放火事件」(9月、東京都)及び「大成建設本社けん銃発砲立てこもり事件」(11月、東京都)の3件の「テロ、ゲリラ」事件が発生し、右翼構成員等5人を逮捕しました。
 このほか、右翼によるテロ等重大事件を未然防圧するため、各種情報活動や右翼及びその周辺者からの銃器摘発に努めました。

在大阪中国総領事館に対する街宣車正門突入車両焼燬事件(4月、大阪)(共同)
在大阪中国総領事館に対する街宣車正門突入車両焼燬事件
(4月、大阪)(共同)

2 右翼による違法行為の取締り

 16年中の右翼による違法行為の検挙件数及び人員は、1,700件2,243人で、15年と比べて若干の増加がみられました。
 これらの検挙事件のうち、右翼運動に伴って発生した事件の検挙は、全検挙件数の20.4%に過ぎず、いわゆる本来の右翼運動とかけ離れた事件が大半を占めています。
 市民の平穏な生活に支障を与えるような悪質な街頭宣伝活動に対しては、その内容や形態をとらえ、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、名誉毀損罪等により、74件226人(15年比19件減72人増)を検挙しました。

右翼関係事件の検挙状況
右翼関係事件の検挙状況


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