表紙・目次 はじめに 第1章 警備警察50年の歩み 第2章 警備情勢の推移 第3章 警備情勢の展望と警察の対応 資料編

<<前へ   次へ>>

オウム真理教対策


1 現在も危険性を有するオウム真理教

 オウム真理教(以下「教団」という。)は、依然として松本被告の強い影響下にあり、組織活動の閉鎖性及び欺瞞性を維持しているなど、再び無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が認められます。こうした教団の危険性は、平成15年1月、公安審査委員会による観察処分の期間更新決定において、改めて認定されました。その後も、累次にわたる警察の捜査や実態解明により、再び「尊師麻原」を前面に出した活動の推進、さらには分派グループの存在等、危険な要素が保持されていることが明らかになっています。
 教団は、近年、地方への進出に力を入れていますが、このような教団施設の進出に対しては、地域住民の強い反発が起こり、撤退に追い込まれた施設もあります。そのため、教団が秘密裏に施設の確保を図る動きがみられ、その過程で欺罔行為を行うなどの組織的違法事案が摘発されています。また、インターネットサイト、大学や地域のサークル活動を通じ、教団名を伏せた勧誘を組織的に行っていることも明らかになっています。
 一方、ロシアにおいて、12年7月に、松本被告の奪還テロを企図したロシア人信者がロシア当局に逮捕された「シガチョフ事件」が発生しました。13年には、「地下鉄サリン事件」(7年3月)後一時撤退していたモスクワに再び拠点を確保し、現在も日本から幹部を頻繁に派遣するなどして、約300人いるとみられるロシア人信者の指導を強化しています。15年4月には、上祐最高幹部自らが、ロシアを訪問し、指導を行いました。

教団の構成員数、拠点施設等
教団の構成員数、拠点施設等
(平成16年6月末現在)

2 特別手配被疑者追跡捜査等の推進

 「地下鉄サリン事件」(平成7年3月)を始めとする一連のテロ事件の首謀者として起訴された松本被告に対する第一審判決公判が、16年2月27日、東京地方裁判所で開かれ、裁判長は、起訴された13件すべての事件で被告が首謀したと認定し、求刑どおり死刑を言い渡しました。
 警察は、教団のテロ事件等に対する捜査を強力に推進し、これまでに松本被告を始めとする教団幹部及び信者合わせて500人以上を検挙し、教団が観察処分に付された12年以降だけでも、47件の事件で延べ60人を検挙しています。しかしながら、平田信、高橋克也、菊地直子ら3人の警察庁指定特別手配被疑者は、依然として逃走中であり、警察としては、これら3人の検挙を最優先の課題として、広く国民からの協力を呼び掛けつつ、全国警察を挙げた捜査を鋭意推進しています。
 また、警察は、松本被告に対する判決公判に関連した内外の信者による不法事案を未然に防止するため、情報収集活動を強化するとともに、関連施設等に対する警戒警備を徹底しました。これらの結果、不法事案等の発生はみられませんでしたが、引き続き諸対策を的確に推進し、内外の信者による不法事案の未然防止に努めるとともに、教団に関連する組織的違法行為の厳正な取締りを推進していくこととしています。


<<前へ   次へ>>

表紙・目次 はじめに 第1章 警備警察50年の歩み 第2章 警備情勢の推移 第3章 警備情勢の展望と警察の対応 資料編