表紙・目次 はじめに 第1章 警備警察50年の歩み 第2章 警備情勢の推移 第3章 警備情勢の展望と警察の対応 資料編

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国際テロ対策


1 情報収集と捜査の徹底等

1 情報収集と捜査の徹底

 平成13年9月に発生した「米国における同時多発テロ事件」(以下「米国同時多発テロ事件」という。)は、テロが一たび実行に移されると、これを途中で阻止することは極めて困難であり、テロ対策上、未然防止が最も重要であることを改めて認識させました。
 テロ対策の要諦は、未然防止にあり、そのためには広範な情報収集と的確な分析が不可欠です。
 警察では、外国治安情報機関等と多種多様な情報を交換し、また、情報の分析について専門的な意見交換を重ねています。加えて、全国警察を挙げての情報収集活動、捜査活動、警戒活動を通じて得られた個々の情報について、総合的な分析を行うとともに、不審点があればその真相解明のための諸活動を徹底して行っています。


2 国際協力の推進

 「米国同時多発テロ事件」にみられるとおり近年の国際テロは、世界各地に散在した勢力による国際的ネットワークを利用して実行される例が多く、国際テロの未然防止には一国のみの努力では限界があります。
 このため、テロ組織やテロリストに関する情報交換を促進するなどの治安機関相互間の協力関係を一層緊密にしていくことに加え、G8や国連等の場において、国際テロ防止のための施策を世界的に進めるための議論も活発に行われており、警察庁も、これらの国際会議に積極的に出席しています。

テロ対処能力向上のためのG8行動計画を採択したエビアン・サミット 写真
テロ対処能力向上のためのG8行動計画を採択したエビアン・サミット
(平成15年6月、フランス)(共同) 

3 テロ資金対策

 犯罪組織の根絶のためには、組織の活動に不可欠な資金を絶つことが極めて重要です。テロ対策においても、「米国同時多発テロ事件」以降、国際的なテロ資金対策が各段に強化されています。
 我が国は、国連安保理決議1373号で求められているテロリスト等の資産凍結にも積極的に取り組んでおり、機動的な凍結措置の実施のため、テロリスト等に対する資産凍結に係る関係省庁会議」が設置され、警察庁もこれに参画しています。


4 体制の強化

 イスラム過激派による国際テロや北朝鮮による日本人拉致容疑事案、不審船事案、諜報活動等の対日有害活動など、我が国に対する脅威は依然として高い状態にあります。
 警察庁では平成16年4月、警備局に外事情報部を設置するとともに、従前外事課に置かれていた国際テロ対策室を国際テロリズム対策課に発展的に改組し、外国治安情報機関等との連携を緊密化するなど、情報収集・分析機能の更なる強化に努めています。
 また、海外で邦人がテロの被害に遭った際の情報収集及び現地治安機関への支援をう「国際テロ緊急展開チーム(TRT)」を、より広範囲の支援活動を行う能力を持つ「国際テロリズム緊急展開班(TRT―2:Terrorism Response Team-Tactical Wing for Overseas)」に改組するなど、これらの問題に的確に対処するための体制を強化しています。

2 重要施設等の警戒

 警察では、組織の総合力を発揮して関連情報の収集・分析を行い、情勢に応じた警備計画を立案し、効果的かつ効率的な警戒警備を実施しています。
 「米国同時多発テロ事件」以降、厳しい国際テロ情勢を踏まえ、総理大臣官邸等我が国重要施設、在日米軍施設を含む米国及びその支援国関連施設等に対する警戒警備の強化を図っています。
 なお、自衛隊のイラク派遣、平成16年3月の「スペイン・マドリッドにおける同時多発列車爆破テロ事件」の発生等に伴い、鉄道に対する警戒警備の更なる徹底を図るなど、情勢に応じた的確な警戒警備を実施し、テロ発生の未然防止に万全を期しています。

3 テロ等対処能力の向上

 警察では、テロ等未然防止対策に万全を期しているほか、生物化学テロに対応するNBCテロ対応専門部隊(注1)、銃器を使用した事案に対応する銃器対策部隊(注2)、ハイジャックや重要施設占拠事案等の重大テロ事件に対応する特殊部隊(SAT)(注3)等の体制の強化、装備資機材の充実強化を図り、テロ等発生時における現場対処能力の更なる向上を図っています。
(注1)NBCテロ対応専門部隊
  警視庁、大阪、北海道、宮城、神奈川、愛知、広島、福岡に設置。生化学防護服、各種検知器等を装備。
(注2)銃器対策部隊
  全国の機動隊等に設置。サブマシンガン、ライフル銃、防弾衣等を装備。
(注3)特殊部隊(SAT)
警視庁、大阪、北海道、千葉、神奈川、愛知、福岡に設置。ライフル銃、自動小銃、特殊閃光弾、ヘリコプター等を装備。

4 関係省庁との連携強化

 警察では、重大テロ等対策に関し、平素から関係省庁との連携強化を図っており、特に、防衛庁や海上保安庁とは、重大テロ等が発生した場合には、緊密な連携の下で事態に対処することとしています。
 自衛隊とは、平成14年11月から、関係道府県警察とこれに対応する陸上自衛隊の師団等との間で、治安出動に際しての連携等に関する共同図上訓練を実施しているほか、海上保安庁とは、15年6月から、関係道県警察とこれに対応する管区海上保安本部等との間で、原子力発電所の警備に係る共同訓練を実施しており、引き続き、関係機関との緊密な連携を図っていくこととしています。

5 水際対策の強化

 警察では、テロの未然防止のため、入国管理局等の関係機関と連携して水際対策等に取り組んでいます。しかし、平成16年5月にアル・カーイダ関係者が他人名義の旅券を使用して我が国に不法に入出国を繰り返していたことが確認されたことから、同様の事案の発生を防ぐため、偽造旅券対策等、更に対策を強化することとしています。
 なお、同年6月には、バイオメトリクス(生体情報)を活用した出入国管理に関して、関係省庁が連携し、その推進を図るため、犯罪対策閣僚会議幹事会の下にワーキングチームが設置されました。


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