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大量破壊兵器や通常兵器等の関連物資に関する貿易管理については、これまでに、国際的な枠組みが構築され、国際社会がこれに取り組んできたところですが、こうした枠組みについては、安全保障を取り巻く情勢に大きな影響を受けてきました。 すなわち、第2次世界大戦終結後は、東西冷戦を背景に、昭和24年11月、共産圏への戦略物資・技術の移転を防止することを目的とする対共産圏輸出統制委員会(ココム)が発足し、加盟国による厳しい貿易管理が行われてきました。その後、ソ連の崩壊等を背景に、平成6年3月、ココムは廃止されました。 しかし、冷戦後の世界においても、通常兵器、関連汎用品及び技術の移転に関する透明性の増大や責任のある管理の必要性は依然として高く、その実現を図るための新たな枠組みが、8年7月、オランダのワッセナー市において合意されました。新たに締結された枠組みは、ワッセナー・アレンジメントと呼ばれ、「地域の安定を損なう恐れのある通常兵器の過度の蓄積を防止すること」を目的として、28か国が加盟して成立しました。 他方、核兵器、生物兵器、化学兵器等の大量破壊兵器及びその運搬手段としてのミサイルの拡散の防止に関しては、冷戦時代からその拡散の阻止を念頭に置いた貿易管理の国際的な枠組みが構築されてきました。昭和45年3月には核兵器そのものを規制する「核拡散防止条約(NPT)」、50年3月の「生物兵器禁止条約(BWC)」の発効、さらに、62年7月には、大量破壊兵器の運搬に寄与し得るミサイル、その部品及び製造設備等の輸出規制である「ミサイル関連機材・技術輸出規制(MTCR)」、平成9年4月には、化学兵器と生産施設の全廃を定めた「化学兵器禁止条約(CWC)」が発効しています。このほか、汎用品については、「原子力供給国会合(NSG)」や「オーストラリアグループ(AG)」による輸出規制が図られてきました。 3年2月の湾岸戦争終結後は、イラクが非規制品により核兵器、生物・化学兵器等の開発、製造を行っていたことが判明し、大量破壊兵器等の開発は、必ずしも規制品によるとは限らないことが明らかとなりました。こうした中、我が国では、8年10月から、非規制品に対する「補完的輸出規制」が導入されていましたが、その規制は、大量破壊兵器関連の特定貨物を列挙して規制する「スペックダウン方式」であったため、核兵器の開発等に用いられるおそれがあり、諸外国で輸出が規制されている貨物であっても、スペックダウン品でなければ輸出が規制されず、国際的な協調体制の中で我が国が抜け穴になるおそれがありました。一方、米国等諸外国では、核兵器の開発等に用いられることを知った場合には、あらゆる貨物が規制される「キャッチオール規制」が既に導入されており、我が国においても同様の制度の導入が求められていました。そこで、14年4月から、それまでの補完的輸出規制に代え、日本版「キャッチオール規制」が導入されました。 この改正においては、原則としてすべての貨物が規制対象とされたほか、特定の国向けの輸出については許可申請が不要とされるなどの所要の改正が行われ、輸出管理体制が整備されました。 警察は、これまでに18件の安全保障関連物資不正輸出事件を検挙しています。これら事案の輸出先としては、北朝鮮向け6件、中国向け5件、旧ソ連向け3件、イラン向け3件、旧東ドイツ向け1件です。不正輸出の違反形態としては、
また、キャッチオール規制違反事件としては、「直流安定化電源不正輸出事件」(15年11月)、「アイ・ディー・サポートに係る周波数変換器不正輸出事件」(16年1月)が検挙されています。 今後とも、国内関係機関との緊密な連携や外国治安情報機関等との情報交換等による情報収集により、大量破壊兵器関連物資等不正輸出等件の摘発に努めていくこととしています。 |
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